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社員たちの自信回復と信頼関係の再構築は企業再生の要
ここ数年、私は再建中の企業を内部から調べてきた。その数は20余社に及ぶ。それぞれ段階は異なるが、どこでもニュー・リーダーが行き詰まった組織を衰亡の淵から引き揚げ、その健康を回復させようと奮闘していた。
投資家や世間の信頼を回復するには、まず社員間において同様のことが求められる。私が調査対象としたリーダーたちは、新しい行動、新しい収益構造に向けて、社員たちの士気を高め、エンパワーメントを推し進めていた。要するに、企業再生には精神面の再生も必要なのだ。
低迷している企業にはさまざまな病、たとえば、秘密主義、非難、孤立、回避、消極性、無力感が宿っており、これらが相互に作用し、ますます状況は悪化していく。
つまり一種のデス・スパイラルへと突入していくわけだが、このような下降トレンドを上向きに変えるには、入念な取り組みが必要であり、CEOはこれらの病を一つひとつ治療していかなければならない。
ここで、ある企業に起こったデス・スパイラルとその影響の例を見てみよう。その社名は「工業時代株式会社」(Industrial Era Corporation)、略して「IEC」という。
学習性無力感:低迷企業に働く力学
IECは、かつて急速な成長を果たし、業界の寵児ともてはやされた過去を持つ。しかしたび重なる製品の販売不振に加え、ポスト・テクノロジー・クラッシュで市場が縮小したため、高コスト体質を支え切れず、下り坂を転がり始めた。
四半期の終わりに近づくたびに減収が報告されるなか、経営幹部たちが決めた対策は、社員にコスト削減を指示することと、新製品の発売を前倒しすることであり、彼らはこの方法で黒字に転換できると考えた。社員たちに次々と命令が下され、厳しい管理が敷かれるようになった。
しかし、このような改革に対する社員たちの目は冷たく、ついには反発が起こった。ひどいケースになると、年末のボーナスを受け取れる最低出勤日数しか会社に出てこないという社員すら現れた。