権力を獲得・強化する4つの方法

 有能なマネジャーというものは、管理職という仕事ゆえに派生する依存関係にうまく対応するために、4種類の方法によって権力をまとい、これを強化している[注1]。以下で説明するこれら4種類の方法を身につければ、依存しなければならない人たちに何らかの影響を及ぼすだけでなく、痛い目に遭わずに済む。

1. 感謝や恩義を感じさせる

 周囲に依存しながら権力を身につけるには、相手から感謝してもらえるような行動を心がけることだ。相手がそのように感じれば、一定の範囲であれば、マネジャーの権力下に置かれてもかまわないと感じる。賢いマネジャーは、自分に恩義を感じ、それに報いてくれそうな者を大切にする。

 マネジャーのなかには、相手が自分に感謝の念を抱いてくれそうなチャンスを巧みに生かしている者がいる。実のところ、このような行動は大した苦労ではない。「まさかの時の友こそ真の友」というが、成功者と呼ばれるマネジャーはこれをわきまえ、依存している相手と真の友情を築こうとすることが多い。公式非公式を問わず、上手に駆け引きしつつ譲歩し、先々のことも考えて恩義を売っておく人もいる。

2. 豊富な経験と知識の持ち主として信頼される

 第2の方法は、特定分野の専門家としての評判を高めることである。豊富な経験とそれに裏づけられた知識の持ち主であると信頼されれば、その分野の仕事では頼られる場面が増える。通常、こうして自分の権力を強化する場合、目に見える実績が必要である。これまでの業績が際立っていればいるほど、権力も大きくなる。

 マネジャーが、専門家としての評判や実績を気にするのは、それによって自分の経験や知識に関する評価が変わるからでもある。これは、大組織にあってはとりわけ重要だ。他人の専門能力について、ほとんどの人が受け売りの情報しか持っていないからである。

3.「このマネジャーとは波長が合う」と思わせる

 第3の方法は、周囲の人々が知らずしらずのうちに、「このマネジャーとは波長が合う」、彼もしくは彼女の考え方に共感できると思わせることだ。

 このような人間の心理に初めて言及したのは、精神分析学者のジークムント・フロイトだが、この傾向が顕著に見られるのは、カリスマ的な指導者を崇拝する時である。マネジャーを理想的な人物であると認識し、無意識のうちにもそう思える(こちらのほうが重要である)ほど、そのマネジャーへの帰属意識が強まる。

 マネジャーは、理想的なマネジャーとして周囲の目に映るよう、さまざまな機会をとらえて権力の強化を図る。たとえば、人から尊敬されるような振る舞いを心がける。努めて部下の前に姿を見せて、組織の目標、価値観、理念について語る。