「アイデアの経済」における人財マネジメント

 素晴らしいアイデアを見つけるのはとても難しい。スイスの巨大製薬会社ロシュの会長兼CEO、フランツ・フーマーはそのことをよく承知している。いわく「我々の研究活動は規模の経済とは無縁です。ロシュは現在、全世界で毎年40億ドルをR&Dに投じていますが、研究活動の世界に存在するのは規模の経済ではなく、アイデアの経済なのです」。

 フーマーによれば、コスト効率ではなく、アイデアと知的ノウハウによって経済性を働かせる能力を競争優位の源泉とする企業がますます増えているという。このことを現実のマネジメントに置き換えれば、リーダーはAクラス社員が活躍できる環境を創出しなければならないということである。

 この一握りのAクラス社員は、与えられた経営資源以上の価値を創出するようなアイデアや知識、スキルの持ち主たちである。たとえば、新しいアルゴリズムを考案したプログラマーや、新薬の構造式を考え出した医薬品研究者を想像してみてほしい。彼ら彼女らによるイノベーション一つで、10年間、会社全体が左うちわで過ごせることだってある。