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管理職になって気づくこと
私はおよそ15年間、管理職に昇格するというキャリア上の節目について、とりわけ花形社員のそれについて研究してきた。
そもそも、管理職に求められる能力は新米マネジャーの能力を超えているものであり、本人たちも予想以上の大仕事であることを早々に悟る。そして、リーダーとして成功するために必要なスキルや手法が、かつて一社員だった時に必要とされたものとはまったくの別物であることを知って驚く。さらに、自分のいまの能力が、管理職という新しい立場に求められる要件を満たしていないことにも驚く。
以前は、専門知識と実行力が成功のカギだった。しかしいまや、チーム全体の行動指針を定め、それを実現させる責任を負っている。このような能力は、一プレーヤーとしての経験だけでは足りない。
私の調査によると、新米マネジャーが新しい役割を誤解していることが原因で、管理職への移行を必要以上に難しくしているケースが多い。
彼ら彼女らが抱いているマネジャー像にも一面の真実はある。しかし、そのイメージは単純すぎて不完全なため、誤った期待を抱いてしまい、後に期待と現実のギャップを埋めるために四苦八苦するはめになる。
以下に挙げる5つの誤解には、ほぼ万人が認める、ほとんど神話と呼べそうなものも含まれているが、これらを自覚することで、成功のチャンスは飛躍的に広がる(図表「新米マネジャーが抱いている幻想と真実」を参照)。
図表 新米マネジャーが抱いている幻想と真実
管理職に昇格した当初、その新しい役割につまずいてしまう人がまことに多い。人の上に立つことにまつわる、さまざまな幻想を抱いたまま、昇格してしまったからだ。このような幻想は単純かつ不完全なものであり、それが原因でリーダーとしての重要な責務を見過ごしてしまう。
[基本特性]
【幻想】権威
「自分はもはや理不尽な要求に縛られたりしない」
【真実】相互依存
「自分の将来は、部下たちの働きいかんにかかっている」
[権力]
【幻想】職務職掌上の権威
「ついに階段を上り切った」
【真実】「職務職掌上の権威」以外のすべて
「みんな慎重で、みずからの胸襟を開き、彼ら彼女らの信頼を得ることに努めなければならない」
[望み]
【幻想】統制する
「部下たちを服従させなければならない」
【真実】やる気を引き出す
「権威で服従させても、彼ら彼女らのやる気を引き出せるわけではない」
[管理方針]
【幻想】一対一の関係づくり
「自分の役割は、部下一人ひとりと人間関係を築くことである」
【真実】チーム全体の調和
「特定個人について何らかの判断を下すと、時にはチーム全体に悪影響が及ぶことがあることを自覚する」
[主要課題]
【幻想】円滑に業務運営する
「自分の任務は、何より円滑な業務運営に努めることだ」
【真実】業務改善につながる改革を実行する
「チームの業績を最大化するために、改革に着手する責任を負っている」
誤解(1)
管理職の権威は絶大である
新米マネジャーたちに「あなたの役割は何ですか」と尋ねると、たいてい人の上に立つことで得られる権利と特権について語る。マネジャーになったことで権威が高まり、その結果、会社にとって最も有益であろうとみずから信じるところを実践できる自由と自律性が拡大すると思い込んでいる。