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偉大なリーダーを真似しても限界がある
この半世紀というもの、リーダーシップの研究者は1000以上の調査研究を実施し、「これが一流のリーダーである」といえるスタイル、特性、資質を探ろうとしてきた。しかし、理想のリーダー像を描き出した研究は一つもない。
もし学者が正真正銘のリーダーシップ・スタイルなるものを突き止めたりしていれば、それを再現するために、みな汲々としていることだろう。それに、これは仮面であり、本当の人格ではない。周囲もそれを一目で見抜くことだろう。
だれかの真似をするとは、本来の自分を偽ることである。他人の経験に学ぶことはできるが、他人になりすましても無意味である。信用は、だれかを真似ている時ではなく、ありのままの自分を表現できている時に得られるものだ。
自分らしさを貫くリーダーはみずからの目標に情熱的に取り組み、みずからの価値観をぶれることなく実践し、知識だけでなく感情の面から人々を引っ張っていく。実りある人間関係を長期的に築き、みずからを律することで結果を出す。
それもこれも、自分自身をよく知っているからである。
我々は125人のリーダーたちにインタビュー調査を実施し、どのようにリーダーシップを伸ばしてきたのかについて尋ねた。その結果、これまで数多の研究がなされているにもかかわらず、「理想のリーダー像」が描かれていなかった理由がよくわかった。実際、3000ページに及ぶ調査記録を分析したところ、リーダーとして成功する条件といえるような、共通の特徴、特性、スキル、スタイルが何一つ見出せないことに驚いた。
リーダーシップはその人の人生経験に大きく影響される。意識的か無意識かを問わず、彼ら彼女らは現実世界での経験のなかで試され、みずからを振り返っては「おのれの本質とは何か」について理解しようと努めてきた。そうするなかで、リーダーシップの目的を悟り、自分らしくあることがリーダーとしての能力を高めることを学んできた。
これは、まったく勇気づけられる事実である。リーダーとしての特性や資質はけっして生来的なものではなく、何か背中を押してくれるきっかけを待つ必要もなく、あまつさえ組織のトップに立つ必要もない。自分の可能性はいますぐにでも発見できる、ということなのだ。