『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』(DHBR)では毎月、さまざまな特集を実施しています。本稿では、最新号の特集テーマ「変わる営業」への理解をさらに深めていただけるよう、関連する過去の論文をご紹介します。

 DHBR2021年6月号の特集は「変わる営業」。コロナ禍は顧客を取り巻く環境を激変させ、購買意思決定に大きな変化をもたらした。自社の営業モデルをどう最適化すべきなのか。既存の価値提案プロセスを見直し、強い営業組織をつくり上げる方法を考える。

 リクルートがこれまでにさまざまな事業を立ち上げ、世の中に広く普及させてきた原動力には、圧倒的な営業の強さがある。同社の営業力の源泉はどこにあるのか。リクルートの代表取締役社長を務める北村吉弘氏は「『個の尊重』が強い組織をつくる」の中で、創業から受け継がれる「個の尊重」というマネジメントの原則を挙げた。

 社員一人ひとりに裁量を与え、自由度を高めることで、挑戦と失敗の経験を通じた学習を促し、個人の成長を実現する。そうして培われる個人の強さが、組織全体の強さにつながっていると北村氏は語る。

 B2Bビジネスでは、トップ営業が時にとても効果を発揮する。ただし、経営者が状況を理解していなかったり、みずからの力量に誤解があったりすると、部下の努力の積み重ねを台無しにすることもある。

 経営トップの営業はどうあるべきか。多くのグローバル企業のアカウントマネジャーを調査すると、トップ営業は主に5つに分類できることがわかった。

 コロンビア・ビジネススクールのノエル・カポン教授らによる「優れたトップ営業の条件」では、それら5タイプの営業への関与手法、成果とリスク、事業業績に及ぼす影響を分析し、状況に応じた効果的なトップ営業を提言する。

 SaaSビジネスにシフトする企業が増えている。商品の販売からサービスの販売に舵を切る時、企業は「何を、誰に、どのように売るか」という既存の方程式を、再構築する改革に取り組むことになる。事業の成功率を高めるためには、戦略と営業管理の再考が必要だ。

 ハーバード・ビジネス・スクールのダグ J. チュン准教授による「営業を刷新するための3つのステップ」では、マイクロソフトとともに実施したケーススタディなどを通して、企業に適切な営業機能を実装するための手法を、3つのステップに分けて解説する。

 企業は顧客の購買プロセスの変化に、営業モデルを最適化できていない。担当者の経験の積み重ねで構築されがちな営業モデルは本来、経営陣が設計に関与し、企業として修正し続けるべきだ。

 ハーバード・ビジネス・スクール上級講師のフランク V. セスペデス氏による「営業モデルを顧客の変化に適応させる方法」では、顧客の実態に営業モデルを適応させるための3つの要素を提示する。

 企業がこの3要素を軸に営業モデルを用意すれば、営業の生産性が向上し、利益を生み出す原動力が強化され、さらには企業の社会的な価値までも高まるという。

 神戸市に本社を置く医療機器メーカーのシスメックスは、検査機器の販売に加えて、検査の際に必要な試薬の販売やアフターサービスの充実を図り、高収益を上げてきた。

 1996年に家次恒氏が社長に就任後、血球計数検査(ヘマトロジー)分野で世界トップシェアを獲得。2020年3月期の連結売上高は、就任時のおよそ10倍となる3019億円にまで伸張した。営業利益率は20%前後と高い水準を保ち、190以上の国や地域と取引し、海外売上高は84.5%を占める。

 競争力の源泉は、メーカーながら世界中の顧客の声を聞くという直接販売体制を築いたことにある。「品質とは顧客満足であり経営とは環境適合である」では、家次氏に法人ビジネスの本質について尋ねた。