『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』(DHBR)では毎月、さまざまな特集を実施しています。本稿では、DHBR2022年4月号特集「成熟企業の競争戦略」への理解をさらに深めていただけるよう、関連する過去の論文をご紹介します。

 DHBR2022年4月号特集は「成熟企業の競争戦略」。既存企業は新興企業に取って代わられるという主張をよく耳にする。しかし実際には、歴史ある企業の多くが環境変化に対応し、「伝統」という資産を武器にすることで、競争力を維持し続けている。

 デジタルディスラプションに代表される急激な時代の変化により、既存企業が新興企業に取って代わられると考える人が少なくない。しかし実際にデータを見ていくと、約25年前に存在していた企業の大半が、今日においても順調に事業を運営しており、この見方は必ずしも正しいものではないとわかる。

「デジタルディスラプションとの戦い:既存企業の生存戦略」ではまず、ディスラプションが既存企業を苦境に追いやるという多くの人が持つ誤解を解き、正しく将来に備えるための助言を行う。そのうえで、ディスラプション時代を生き抜いてきた既存企業の事例を交え、破壊的変化をもたらす相手(ディスラプター)と戦う4つのアプローチを紹介する。

 クレイトン・クリステンセンは破壊的イノベーションの理論の中で、既存企業がいかにして自社の成功に溺れるかを解説し、それが戦略論の主流になった。企業の歴史や規模が資産と見なされたこともあったが、今日ではそれらは脆弱性と考えられている。

 しかし、ディスラプションを回避して、繁栄し続ける企業は多数存在する。「企業の『伝統』を競争力に転換する方法」では、既存企業が競争力を維持し続けるための方法論を、具体例とともに提示する。伝統企業が積み上げた資産を競争力に転換し、競争優位をもたらす3つのケイパビリティについて解説する。

 自社が置かれた市場の変化を察知して、素早く組織に対処を促すことは難しい。変革の必要性を訴えるためには、説得力あるデータが欠かせない。しかし、そのようなデータが揃う頃には、絶好の機会は消失しないまでも縮小してしまっている。

 では、自分たちの事業が危機に直面する前に、組織に変革に向かって行動を起こさせることができるのだろうか。

「限られた情報で変革を促す方法」では、筆者らが世界的なローファームKWMのオーストラリア法人で採用した「私的データを生成すること」「証明の基準値を下げること」という2つのアプローチを説明し、そこから得られた他のリーダーたちにも応用可能な方法について論じる。

 製造業には大きな変化の波が押し寄せている。脱炭素対策に向けた電動化、人工知能を用いた自動運転技術、デジタル化に伴うビジネスモデルの刷新、そして中国の成長に伴う市場構造の変化などである。

 こうした変化に立ち向かってきた代表的な企業がグローバル建機メーカーのコマツだ。2021年に創立100周年を迎えたコマツは、これまでにも数多の危機を乗り越えてきた。その戦略は、ハーバード・ビジネス・スクールのケース教材にも数多く登場し、世界から注目を集めてきた。

「コマツは全員経営で危機を価値創造のチャンスに変えていく」では、コマツの小川啓之代表取締役社長兼CEOに、戦略の本質について聞いた。

 日本電気(NEC)はかつて、世界から高く評価される有望事業を複数展開していた。しかし、2000年代以降は競合に先を越される状況が続き、リーマンショック後には大規模な人員削減を行うなど、厳しい経営状態が続いた。その後、長期にわたる変革が結実し、2019年度から2年連続で最高益を更新。日本を代表するグローバル企業として、再び存在感を示し始めている。

 現在社長兼CEOを務める森田隆之氏は、NEC再建の中心的役割を担った人物である。NECの存在意義から問い直す中で、創業以来培ってきた技術力が自分たちの武器であると確認できた一方、それを価値に転換できていないことが根本的な課題であったと森田氏は指摘する。

「NECの存在意義を問い続け、世界に誇る技術力を価値に結び付ける」では、NECはなぜ苦境に陥り、どのように抜け出したのか、そして、これから世界の競合と渡り合っていくために何が必要なのかについて、森田氏に語ってもらった。