『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』では毎月、さまざまな特集を実施しています。ここでは、最新号への理解をさらに深めていただけるよう、特集テーマに関連する過去の論文をご紹介します。

DHBR2020年7月号の特集タイトルは「リーダーという仕事」である。
先の読めない不透明な状況が続くいま、どのようなリーダーシップが求められているのか。誰にも正解がわからない中でリーダーが果たすべき重要な役割の一つは、個々が自律的に協働するよう促し、組織の力を最大限引き出すことではないだろうか。それにはカリスマや少数の専門家に頼るのではなく、ともに働くすべての人々の協力が不可欠だ。
神戸大学大学院の鈴木竜太教授による「自律的な協働を促すリーダーシップ」では、これまでのリーダーシップ論を整理し、自律的に協働するようチームの行動を促すため、リーダーが行うべきことを明らかにする。
リーダーシップという言葉が一般的となり、学術的にも実務的にも、多種多様なあり方が提示されている。だが、リーダーシップとは何かと尋ねられ、きちんと答えられる人は少ないだろう。組織行動論が専門である筆者は、それを「集団のメンバーが目標達成に結び付く行動を促していく能力」だと述べる。
では、まだ答えのないような困難な状況を迎えた場合、どのようなリーダーシップが必要なのか。そこには、少数のリーダーや専門家だけの力だけではなく、困難に直面する人々すべての力が求められる。つまり、フォロワーの自律的な協働によってこそ困難を克服できる。
ハーバード・ビジネス・スクールのフランシス・フライ教授らによる「リーダーの信頼を支える3つの力」では、リーダーに不可欠な信頼を高める方法を論じる。
信頼は、良識的な人間の行動を支える土台である。稼いだお金を商品やサービスと交換するのも、結婚相手に人生を捧げるのも、そこに信頼があるからだ。そして、リーダーにとっては有しておくべき資産の一つである。
信頼には、それを支える3つのドライバー──オーセンティシティ(自分らしさ)、ロジック、共感──がある。そして、これらのいずれかが揺らぐと信頼が損なわれ、その揺らぎを克服すれば信頼を高めることができるとして、それぞれのドライバーについて具体的な克服の方法を説いている。
ロンドン・ビジネススクールのハーミニア・イバーラ教授らによる「リーダーのコーチング能力を高める方法」では、筆者らの研究をもとに、マネジャー個人として、さらに組織としていかにコーチング能力を高めていくかを示す。
過去の成功はもはや将来の成功の指針とはならない。いまやマネジャーは正しい答えをすべて知っているとは限らないし、知ることもできない。必要なのは指示を与えることではなく、適切なサポートやアドバイスによって新たなエネルギーやイノベーションを引き起こす、コーチング能力である。
元保険監督者国際機構(IAIS)事務局長の河合美宏氏による「セキュアベース・リーダーシップ:仲間を尊重し、チームの力を最大限に引き出す」では、国際機関をゼロから立ち上げ、20年にわたり牽引してきた筆者がみずからの経験を踏まえ、日本人の得意とするリーダーシップのあり方を述べる。
グローバル化の進む日本企業にとって、人種や国籍の異なる人々をマネジメントする機会が増えている。だが、そこで欧米流のスタイルを真似しても機能しなかったという事例は、枚挙にいとまがない。
それでは、国際社会において日本人ならではのリーダーシップスタイルとは何か。営利組織よりも難しい非営利組織のマネジメントを通じて見えたのは、心理的な安全性を確保し、コミュニケーションをより深めながら仲間を尊重しつつ、彼ら彼女らの挑戦を最大限に促すスタイルだ。
ロンドン・ビジネススクール教授のアンドリュー・リカマン卿による「リーダーは優れた判断力を身につけよ」では、判断の優劣を左右する要素して「学習」「信頼」「経験」「中庸」「選択肢」「遂行」という6つを挙げ、それぞれを詳細に解説するとともに、身につけるためのコツを紹介する。
リーダーは日々、大小さまざまな意思決定を迫られる。データをできる限り揃えて、議論も尽くしたのに、最終的な決め手を欠く時もあるだろう。その難しい状況でも組織やチームを的確な選択へと導くために、リーダーには優れた判断力が不可欠だ。
ソニー代表執行役会長兼社長CEOを務める吉田憲一郎氏へのインタビュー「ソニーは、誰のために、何のために存在するのか」では、吉田氏に自身のリーダーシップ論を聞いた。
吉田憲一郎氏が社長就任直後、まず注力したのが、企業パーパス(存在意義)の明確化である。創業74年、社員11万人のグローバル企業が、次の成長に挑戦していく段階にあって、あらためて自社の存在意義を共有することが大切と考えたからだ。
パーパス設定過程に多くの社員を巻き込み、ベクトルを合わせた後は、各事業の責任者が、現場でスピーディに必要な判断を下し、着実に成長。そして、このパーパスドリブン型リーダーシップは、危機に際しても、想定通りに機能した。