アフター・サービス市場の課題

 多くの企業は「アフター・サービス市場での競争は容易ではない」と考えており、これは当然ともいえる。業界を問わず、アフター・サービスの提供は、ものづくりよりもさらに複雑だからである。

 アフター・サービス・ネットワークを構築するに当たっては、販売中の製品だけでなく、過去に販売していた製品すべてについてサポートする必要がある。

 製品シリーズごとに部品もベンダーも異なるため、アフター・サービス・ネットワークが対応するSKU(最小在庫単位)は、往々にして製造部門の20倍にも達する。それに伴って、世界各地に散らばるサービス担当者にさまざまな技術スキルを身につけさせなければならないという課題もある。

 そのうえ、アフター・サービスを取り巻く事業環境は予測しにくく、安定性にも欠ける。というのも、修理の需要はこれといった規則性なしに突発的に生まれるからだ。くわえて、故障した部品の回収、修理、廃棄なども、いまや地球環境に配慮しながら行わなければならない。

 ものづくりでは、品質や納期は予測しやすく、ジャスト・タイミングで原材料が届くように配送を手配することが目標となる。かたやアフター・サービスでは、故障が予期せず起きる以上、いつどれだけのスペア部品が必要になるかは、確率分布によってしか語れない。予測内容に合わせてスケジュールを立てるのではなく、リスクを低減させるような予測が必要なのだ。

 サービスのサプライチェーン、製造のサプライチェーンのいずれも、原材料、情報、金の流れを通じて機能や人材が結びついているが、両者にはさまざまな点で違いもある。