ミドル市場の急拡大:「グッドイナフ」を狙え

 中国の市場構造は、最近まで単純明快だった。上位市場に小規模なプレミアム・セグメントがあり、外資はここを攻め、高い利益率と急成長を享受してきた。下位市場には巨大なローエンド市場があり、中国企業はここに向けて、低品質の模倣品を、高級品に比べて40~90%も安い価格で販売してきた。そして、これらの間に存在するミドル市場が、急拡大しているグッドイナフ・セグメントである(図表「中国のテレビ市場の構造」を参照)。

 このグッドイナフ・セグメントが成長しているのにはいくつか理由があるが、消費者の購買パターンと嗜好が変化していることが大きい。これは、次の2つの傾向による。

 一つは、消費者の所得が増えたことで、これまで購入してきたローエンド製品からよりハイエンド製品に乗り換える場合である。もう一つは、高所得層が、高価な海外ブランドから離れ、比較的安価で、それなりの品質を備えた国産品に乗り換える場合である。なお、B2Bの分野でも同じことが当てはまる。

 先見の明のある企業は、多国籍企業か中国企業かを問わず、急拡大している中国のミドル市場において、消費者のシェア・オブ・ウォレットとマインド・シェアを着実に伸ばしてきた。それだけでも大きな成果といえるが、これらの企業はさらに、将来、グローバル市場で競争する態勢を整えつつある。