標準化からローカライゼーションへ

 過去数十年間にわたって、ウォルマート・ストアーズ、ベスト・バイ、マクドナルドといった巨大小売チェーンは、そろって標準化戦略を追求してきた。店舗フォーマット(店舗業態)や品ぞろえ、業務プロセスやマーケティング・プロセスを継続的に改善し、国外に展開する場合にも、その成功方程式を適用してきた。

 これらの企業がサプライヤーにも自社同様の厳しい一貫性を要求してきた結果、消費財メーカーにも消費財のサプライチェーン全体にも、標準化という価値観が深く植え込まれてきた。

 従来の消費財市場では、こうした標準化戦略の有効性はきわめて高いものだった。しかし、もはやこの戦略も収穫逓減の閾値(いきち)、すなわちこれからはその効果がただただ低下していくところに至っている。

 ある特定地域の人口特性を調べるジオデモグラフィックス(地政人口統計学)の調査結果によれば、消費者の多様化が進んでいるという。1970年代、人口統計調査会社のクラリタスは、人種、年齢、経済力、都市化、住居形態、家族構成に関する統計調査に基づいて、アメリカ国民のライフスタイルは40種類のセグメントに分類できるという結論を出している。しかし現在、この数は65%増加し、セグメントは66種類必要になったという。

 標準化戦略が葬られつつある理由は、消費者の多様化だけではない。大量出店に走る小売チェーンが多かったため、文字どおり拡大の余地がなくなっていることも一因である。既存店舗と食い合うことなく新規出店することは、もはや不可能なのだ。