-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
-
PDFをダウンロード
「自己決定顧客」と「企業決定顧客」の違い
多くの企業は、新規顧客を増やそうと、値引きやお試しクーポンなど、あの手この手と販促プログラムを繰り出す。そのかいあって、購買に結びつくことも少なくない。ところが、金融、ファスト・フード、自動車ディーラーを対象に実施した調査によると、たいていの販促戦術が逆効果を招いていることがわかった。
某銀行の新規顧客300人にアンケート調査したところ、回答者の71%がその銀行の勧めで口座を開いたという。このように回答した人たちを、私は「企業決定顧客」(firm-determined customer)と名づけた。一方、みずからの意思で銀行を選んだと思っている人たち、すなわち「自己決定顧客」(self-determined customer)と名づけた顧客はわずか29%だった。
そして1年後、後者は前者の2倍以上の利益をもたらし、しかもこの銀行との取引を止めた顧客の数は約8割も少ないことがわかった。別な調査でも同じような結果が得られた。たとえばデリカテッセンの場合、自己決定顧客は企業決定顧客よりもロイヤルティが高く、ファスト・フードのシェア・オブ・ウォレット(可処分所得において当該商品の支出額が占める比率)も大きいことが判明した。
強引で、インセンティブに頼ったマーケティング戦術は、たしかに新規顧客を獲得しやすいかもしれない。しかし、こうして獲得した顧客たちはその企業と長期的な関係を築くことへの関心は乏しく、差し出されたエサに飛びついているだけにすぎない。しかも、ロイヤルティの高い自己決定顧客が、その高圧的なやり口に嫌気を差して離反してしまうかもしれない。
利益が増加し離反率も減少する
本当に大切な顧客は、お決まりのインセンティブや強引なやり口には目もくれない。では、このような顧客に売り込むにはどうすればよいのだろう。あなたの会社をひいきにしているという気持ちが変わらないように、たとえば特別プランなど、関係を継続してくれたことに報いるインセンティブを提供することだ。
某銀行はこのような自己決定顧客に、一般より高い金利、サービス手数料の割引または無料化、預金残高を高く維持するための無料の投資アドバイスなどを提供した。