『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』(DHBR)では毎月、さまざまな特集を実施しています。本稿では、最新号の特集「これからの人事」への理解をさらに深めていただけるよう、関連する過去の論文をご紹介します。

 DHBR2021年12月号の特集は「これからの人事」。組織のあり方や従業員のニーズが劇的に変化する中、アフターコロナを見据えて、これからの人事が果たすべき役割を探る。

 デジタル・トランスフォーメーション(DX)や人工知能(AI)活用、職場のダイバーシティ・アンド・インクルージョン推進など、いま企業は大きな環境変化の真っただ中にある。

 終身雇用や年功賃金に代表される日本的な人事制度、さらには新卒一括採用から幹部育成法までもが転換を余儀なくされている。一方、社員の能力を最大限に発揮させるという人事の本質的なミッションは変わらないどころか、今後さらに重要性を増すだろう。

「人事は変革の伴走者であり、支援者である」では、エッソ石油、ファイザー製薬(現ファイザー)などを経て、現在は総合化学メーカーの三菱ケミカルで人事改革を進める常務執行役員の中田るみ子氏に、改革の狙いやあるべき人事の姿などを聞いた。

 テクノロジーの進化はこれまでも仕事の性質を変化させてきたが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックがその勢いを加速させている。コロナ後の競争をリードするのが、テクノロジーの活用を前提とする組織を構築した企業であることは明らかだ。にもかかわらず、ほとんどの企業が旧来の組織体制と人材マネジメントを踏襲し、変革に踏み出せていない。

 ベイン・アンド・カンパニーパートナーのマイケル・マンキンズ氏らによる「データ主導の人材マネジメントを実践する方法」では、ベイン・アンド・カンパニーが世界300社以上を対象に行った調査に基づき、データ主導の人材マネジメントを実践するうえで欠かせない6つの要因を提示する。

 近年、優れた専門職者獲得と人材多様化が急務となり、仕事復帰プログラムを提供する企業が増えている。同プログラムは人材獲得策として有効なだけでなく、職場から離れた従業員に対しての強力なメッセージにもなっている。

 アイ・リローンチ共同創設者兼CEOのキャロル・フィッシュマン・コーエン氏による「優れた専門人材のキャリア再開をどう支援すべきか」では、同プログラムの発展の軌跡や類型化を示したうえで、「キャリア中断後も新たな職務で成功する専門職者を増やしたい」という人々と企業がその共通目標を達成するための方法を紹介する。

 2008年の景気後退では、企業は従業員の削減によって危機を乗り切り、「雇用なき景気回復」と呼ばれる状況に陥った。しかし、新型コロナウイルス感染症によるパンデミック後を見据えるいま、企業は同様のアプローチを取るべきではないとハーバード・ビジネス・スクール教授のライアン W. ビュエル氏は述べる。

 その代わりとして、従業員の役割を変えることが重要であり、特に顧客との有意義なつながりを増やすことによって従業員はいちだんと大きな価値を発揮できるようになるという。「従業員の価値を顧客とのつながりから問い直す」では、雇用者がパンデミック後の従業員の役割をどう再考すべきか、さまざまな研究結果をもとに5つの助言を紹介する。

 CRM(顧客管理マネジメント)プラットフォームを提供するセールスフォース・ドットコムは、世界でも「働きがいのある会社」として数々の表彰を受けている。その人材マネジメントの特徴は、社員の成功に焦点を定める「エンプロイサクセス」にある。人事が社員の支援に徹することで社員の成功につなげ、それが顧客や会社の成長をもたらすというコンセプトだ。

 その実現には、情報の透明性とテクノロジーの徹底活用、そしてデータドリブンな意思決定が欠かせない。とりわけ最大の推進力となるのが、4つのコアバリューをもとにした企業文化である。セールスフォース・ドットコム常務執行役員人事本部長の鈴木雅則氏による「セールスフォースの競争力は『社員の成功』から生まれる」では、競争力の源泉ともいえるエンプロイサクセスと企業文化のデザインの仕方から、これからの人材マネジメントに必要なヒントを探る。

 職場に存在する人種差別や偏見に対して、組織はさまざまな手段を講じて是正に取り組んでいる。特に、無意識バイアスに対処する研修、「アンコンシャスバイアス・トレーニング」は、その中心的な役割を担ってきた。

 だが、従来のアプローチには致命的欠陥がある。バイアスを自覚できても、軽減につながらないのだ。無意識バイアスを克服するには、従業員が実際に行動を改め、どれだけ改善できたか進捗を追跡することが欠かせない。

 ハーバード・ビジネス・スクール教授のフランチェスカ・ジーノ氏らによる「アンコンシャスバイアス研修はなぜ機能しないのか」では、アンコンシャスバイアス・トレーニングの構成要素について論じ、組織がバイアスを軽減するという目標を達成するための具体的な方法を紹介する。